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西鉄宮地岳線部分廃止特集 - 第1回1 2 3 4 5 6 7 
 2007年春に一部区間が廃止になる西鉄宮地岳線。
 その周辺をいろんな切り口で取材…出来るといいな的なコーナーなのです。
 宮地岳線の末端区間が廃止になる。
 そのことが知らされたのは、あまりにも唐突だった。なにしろその発表の1年ほど前の新聞記事では「現時点では廃止は考えていない」という西鉄側の談話が載っていたのだから。

 廃止反対の声も空しく、予定通り今度の春には宮地岳には電車が来なくなってしまう。
 つまり、宮地岳線で宮地嶽神社へ初詣に行くことはもう出来なくなってしまうのだ。
 そう考えると居ても立ってもいられない。「今度の正月は宮地嶽神社に行ってくるからね」と家族に告げて家を出たのであった。

 1月1日朝9時すぎ、天神。
 実はこれの前に、機戦鎧獣殿と共に志免炭鉱竪坑櫓方面に初日の出を見に行ったので、そのままの足で宮地岳線へ向かうことにする。
 西鉄福岡駅で機戦殿と別れた後、とりあえず朝食を…と思ったのだが、元日故軒並み閉店。なんとか新天町のマクドナルドが開いてるのを見つけ、そこで腹ごしらえ。



正月の福岡市営地下鉄といえば、全ての車輌の貫通路上に掲げられた旗。これを全編成に行うのは相当手間だと思われるのだが、今も昔も変わらず実施している。

 腹ごしらえが済んだので、宮地岳線方面へ向かうことにする。地下鉄天神駅の改札を通り、ホームへの階段を降りると、タイミングよく貝塚行きの電車が到着したので乗車。
 中洲川端駅から箱崎線へ入り、箱崎宮前で初詣客の乗降がぱらぱらと。箱崎九大前を過ぎると坂を駆け上がって地上に出、終点貝塚に到着。
 ここから今回の本題、宮地岳線に乗り換え。乗り換えといっても面倒では無く、地下鉄の自動改札を出て直進すればすぐそこが宮地岳線の改札。全くの同一平面上で、連絡きっぷが発売されているので財布を出す必要も無い。

貝塚駅コンコース内に掲げられた西鉄宮地岳線の路線図。地下鉄のラインと共に都心へのバス路線が描かれ、下にバス時刻表まで掲示してあるのが西鉄らしい所。
 宮地岳線は昔ながらの手動改札。入鋏スタンプを押してもらいホームへ。
 ホームには313形が停車中。発車までにはしばらく時間があるので写真を何枚か撮る。私と同じ考えで宮地岳線にやってきた人は多いようで、「お仲間」の方が何人か居た。

宮地岳線の改札口(左)と、2番のりばに停車中の電車(右)。今回乗車した車輌である。
 先頭の座席を確保して、いよいよ発車。運転士さんがマスコンを廻すと…おおっ!この車輌は吊り掛け駆動だ。元気よく加速して多々良川を渡る。名島から高架化された区間になる。近代的な高架を走るツリカケ電車というのもなかなかミスマッチで面白い。…西鉄がこの路線に最低限の投資しかしていないという実情も伺えるが。
 戦前製の駅舎は無くなってしまった香椎を過ぎると高架を駆け降り、切通しを過ぎると遊園地が見えてきて、そこが香椎花園前。このあたりから「ちょっとすいません、写真撮ります」というのがきっかけで、隣の席の方と話が弾む。その方は福岡出身だけれども今は関西在住で、正月の里帰りついでに廃止になる宮地岳線に乗りに来られたそうだ。


案内放送に音楽を使っているので、宮地岳線の案内テープには音楽著作権団体のシールが貼られている。これで幾らかかっているかは不明。この費用がチューリップに払われているかはもっと不明。

 和白駅でかつては同じ会社だった香椎線をオーバークロスし、区間列車の終点である三苫へ到着。…あれ?案内テープの到着メロディが「サボテンの花」だ。本来なら香椎花園前で流れるはずのメロディなのだが…。そういえば花園前では「心の旅」がかかっていた気がする。編集をミスったのだろうか。
 ちなみに「サボテンの花」も「心の旅」もフォークグループ・チューリップの曲だが、これはメンバーのなかに宮地岳線沿線在住の方が居たことからの選曲らしい。

 西鉄新宮に到着、ここからいよいよ廃止予定区間に入る。2輛編成の車内に立客も目立ち始めたな…なんて思っているうちに駅に停まる度に乗客は増え続け、花見駅を過ぎると通勤電車並みの混雑となっていた。正直人が多くて、車窓を楽しむどころではない。恐らく廃止直前を除いて最後の書き入れ時になるのだろう…。
 西鉄福間駅で旧宮地嶽駅への廃線を右に見て、宮地岳駅に到着。どっと人が降り、身軽になった電車は終点津屋崎に走り去って行く。

電車が到着直後の駅は、ラッシュ時のような混雑。

それが収まって、電車はあと一駅の津屋崎へ。



これがその「南側の道」駅からの道には無い縁日が並ぶ。つまりここでも、鉄道は「無くても構わないモノ」になろうとしている。

 宮地岳駅は神社の玄関駅ならではの臨時改札口を設けた駅舎である。ただ、私が訪れた11時頃はそこは使用せず、通常の改札口のみを使用していた。もっと早い時間には使用していたのだろうか、それは分からない。
 自動車通行止めの神社への道をてくてく歩いて行き、参道入口の交差点まで辿り着くと驚いた。こちらの宮地岳線からの参拝客より、大駐車場とJR福間駅のある南側の道からの参拝客の方がよほど多い。縁日まである位なのだ。
 恐らく来年以降宮地岳線が無くなっても、クルマで訪れるか、JR駅から歩くか…結局はそういう事なのだ。あるいはもっと「交通の便の良い」神社に行くようになるのだろう。初詣なんて所詮「不要不急の旅」なのだから。

宮地嶽神社の境内。拝殿の大注連縄に圧倒される。

 参道の階段を上がっていき境内へ。元日と言うことで人が多い。参拝した後、ご朱印をお願いする。私の御朱印帳に初めて「一月一日」の日付が印された。
 ここ宮地嶽神社は商売繁昌の神様として有名。余談ではあるが宮地岳線の電車の運転台には、宗像大社の「交通安全」の御守りが装備されている。乗客が少ないのもむべなるかな。
 坂道を下って参道へ戻る。参道では「松ケ枝餅」なるものを売っている。名前も見た目も味も太宰府天満宮で売っている梅ヶ枝餅にそっくりだ。

宮地岳駅への道を示す看板。

 帰りがけに時刻表付きの宮地岳駅への案内看板を見つけた。今後この看板はどうなって行くのだろうか。

 再び宮地岳駅。相変わらず電車が到着する度に沢山の参拝客が降りてくる。
 きっぷ売場横のPRボードには300形電車のイラストが描かれた「西鉄初詣」のポスターがあった。最後の初詣ポスターだからだろうか、なかなか凝ったデザインをしている。

帰りがけに撮った宮地岳駅の駅舎と、初詣のポスター。



 帰りの電車は300形、しかも先ほどのポスターに描かれた305号の編成だ!発車すると重苦しいモーターの音。そうか。この編成はツリカケ車であったか。あのポスターのイラストを描いた人はなかなかのマニアではないだろうか。

 泣き叫ぶようなモーター音を上げ、命一杯に加速して、松原の中を電車は駆け抜けて行く。

西鉄宮地岳線部分廃止特集 第1回 終 
第2回に続きます。 
著 者 紹 介D.Na - でぃ・えぬえい
当サイト「九州電波通」の管理人。
宮地岳線は私の人生の中でツリカケ電車初体験の路線。
部分廃止後ツリカケ車はどうなるのか、不安なのです…。
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