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西鉄宮地岳線部分廃止特集 - 第7回1 2 3 4 5 6 7 
 2007年春に一部区間が廃止になる西鉄宮地岳線。
 その周辺をいろんな切り口で取材してみました。
 もう、あと数日。
 最期まで電車は普段通り走り続ける。
 けれども、周辺は少しづつ違った空気を帯びはじめる。



 廃止後に向けての工事も進み、沿線には電車を撮りにやってきた人の姿─私も含めて─も多くなってきた。

 その空気をどうとらえるか、ということに戸惑いつつも今日も出掛けることにした。

 まずは福間駅へ。この駅は特に広い構内を持っていて、2番乗り場の反対側には線路があったかのようなスペースがある。貨物輸送用の側線でもあったのだろうか。

 今日はここから花見駅まで線路沿いに歩いて行こうと思う。
 駅から線路沿いに南下していって、前回夕方の写真を撮った西郷川の橋へ。今回は海側の方へ…と、ここには撮り鉄の方々が沢山。私も負けじとカメラを構えて撮ってみたけれど…。
 結果はNG。これ以上拡大すると手ブレでどうしようもない。私はこういう「お立ち台」的な写真は苦手なようだ…。

 さらに線路にそって南下してゆく。その途中、クルマから降りてきた男性から声をかけられる。
 「あそこの橋んとこカメラ持った人が沢山居りますけどなんかあるんですか」
 「…ああ、今月一杯でここの路線が無くなるんですよ」と、宮地岳線の線路を指差しながら答える。
 するとその男性は、戸惑ったような表情を見せ、それから「ああ!」と納得する。まるで、たった今線路の存在に気が付いたかのように。
 たった今ということは無いにしても、この男性は宮地岳線を利用したことなど無いのだろうし、眼中には無い存在なのだろう。地方において公共交通の存在はそれほどまでに小さくなっているのだ。

 橋を渡ってしばらくすると、線路は畑の中を一直線に延びていた。ここは柵が無くて車輌が良く見える場所。ちょうど3輛編成がやってきた。
 ラッシュ時運用のこの編成も、終点近くでは持て余し気味。

 ところでこの周辺では、不思議な音がしている。…走っている姿は無いのに、遠くから電車の走る音がずっと聞こえてくるのだ。最初はJRの電車の音が聞こえているのかと思ったが、違う。いくらJRだからといってこんなに列車は走っていない。
 気になって発生源を調べてみると、それはなんと海だった。波の音が松原を抜けて低い音だけが残り、電車の音のようになっているのである。
 そんなわけで、また海岸へ出てしまう。日没後の残照が美しかった。

 そんなことをしているので花見駅に着く頃にはあたりはすっかり暗くなっていた。このあたりの住宅街は街灯も少なく、暗い。

 ここから再び電車に乗って、ゴルフ場前駅へ。
 家路に向かう人を乗せ、鉄路を眩く光らせて電車がやってくる。何十年と繰り返されたであろうこの光景もあと数日で消えてしまう。
 駅員のおばさんの、降りるお客さん一人一人にかける「ありがとうございます」の声が、優しく響いていた。

西鉄宮地岳線部分廃止特集 第7回 終 
著 者 紹 介D.Na - でぃ・えぬえい
当サイト「九州電波通」の管理人。
もっと、ローカル線らしい夜の姿が撮りたかった、見たかった…と後悔しています。
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