■ プ ロ ロ ー グ 。 ある日、それとなくWebを見ていたら、面白い情報を見つけた。 長崎県と佐賀県の県境にある「県界」というバス停。見ればお互いの県から路線が伸びて行き、県境のところでぷっつりと切れるようなバス停らしい。 そんな情報をみて、心がワクワクとしてきた。…どんな県境なのだろう…山の尾根なのだろうか、それとも川があるのだろうか?そして、そこにある2つのバス停はどんなバス停なのだろうか?その周りは?まさか1軒も家が無いような所にバス停が並んでたり…? 「どうしてもこの場所に行ってみたい!」そう思った。しかし、どうやって行こう…最寄りの駅から徒歩で行こうか…いやダメだ、相手がバス停なのにこれでは面白みが無さ過ぎる。せめて前後のバスくらい乗らなきゃ。…いや、どうせだから全部バスで行ってみるってのはどうか。それも高速バスなんか使わず、路線バスだけで。佐賀と長崎の県境を越えられるんだから福岡から佐賀だって行けるはず。いっその事長崎市までいっちゃえ!
旅立ちの朝、自宅近辺にて。空はどんより。 | こういうわけで今回の旅は始まった。
8月31日、世間一般では夏休み最後の日。折しも前日台風が九州を直撃し、交通網がストップした翌日である。どこかでバスがまだ運休しているかもしれないのに、何故この日に決行したのか。それはできるだけ学生によるバスダイヤのずれを避けたかったから、である。自分のスケジュールではこの日しか無かったし、もちろん前日に台風が来ることなど予想できなかった。…でも、それは言い訳で、今すぐにでも県界バス停を見たかっただけなのかもしれない。 ともかく、私は朝早くの電車で博多駅に向かっていたのだった…。
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1.博多駅交通センター→甘木バスセンター (西鉄バス [400]甘木営業所行 乗車時間67分 運賃700円)
博多駅交通センター | 7時16分、電車で博多駅に着く。すぐさまこの旅ののスタート地点である博多駅交通センターへ向かう。 3階34番のりば。今回の旅は、ここから。 | 3階34番のりば…ここは高速バスや、西鉄バス以外のバスの乗り場である。このバスは高速バス並みの扱いなのか、それとも福岡都市圏のバスでは無いので仲間はずれなのか…。 発車まで少し時間があったのでビル内のマクドで朝食をとる。思いのほか時間がかかり、ギリギリで3階に戻ると、バスが来るべき乗り場に…別府行き高速バスが停まっている。いきなりしょっぱなから乗り遅れたー! ………と思ったら、その高速バスが発車した後に涼しい顔して甘木行きがやってくるではないか。改めて時刻表を見ると、同じ乗り場なのにダイヤ上では同時刻発なのであった…。
7時36分、博多駅交通センター発。しばらく福岡の街中を走る。昨日の台風で散らかったゴミを片付ける為か、清掃車が至る所で見られた。
雲がかかる四王寺山 | 千代インターで都市高速へ入る。この路線は何度か乗っているのであまり目新しさはあまり無い。特に都市高の車窓は単調で眠くなる…。台風は過ぎ去ったが、天候はあまり良くなく、遠くにみえる四王寺山には雲がかかっていた。 水城で一般道に戻り、3号線バイパスを抜け、針摺から朝倉街道をひたすら南東に。…長崎は南西であるのに、バスだけで行くためには一旦甘木を通らなくてはならないのだ。一面の田圃から、だんだんと道沿いの建物が増えて行く…まるでグラデーションのように。この様相を見ると私は、甘木の街が近付いて来たのだな、としみじみおもうのである。8時43分、甘木バスセンター着。ここまでは楽勝のルートである。 |
甘木までのバス。福岡県民ならイヤでも見かける、西工ボディ+標準色である。窓がスモークガラスなのが珍しいくらいか。 |
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2.甘木中央→田主丸中央 (甘木観光バス [4]田主丸中央病院行 乗車時間21分 運賃410円)
甘木バスセンター |
甘木中央バス停 | 甘木バスセンター …といっても今はプレハブ小屋だけになっている。甘木観光バスもここには入らず、近くの郵便局前の「甘木中央」に停車する。待ち時間の間にその郵便局からお金を降ろしておく。 しばらくすると、白と淡いすみれ色のカラーのバスがやってきた。このバスこそが次に乗る甘木観光バスの路線バスカラーである。 |
甘木観光バス 田主丸中央病院行き |
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いざ、筑前から筑後へ…! | 社紋や「NEW LIFE AMAGI」などのレタリングが少々ごちゃっとした感もあるが、私は割とセンスの良いカラーだなと思った。
9時15分、甘木中央発。途中朝倉病院に寄り、県道33号線を南下して「両筑橋」を渡って筑前から筑後へ。途中道沿いにバスの廃車体が2つあるのを見たのだが、何故か長崎バス!なんとなく今回の旅との因果を感じる。 田主丸の街に入り、9時36分、田主丸中央着。国道210号線を南側に抜けた所に甘観バスの田主丸中央バス停はあった。このバスは田主丸中央病院まで行くのだが、全ての乗客がここで降りていた。 |
田主丸中央バス停で降りると、向いに丸型ポストがこんにちは。 |
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3.田主丸中央→西鉄久留米バスセンター (西鉄バス [20]JR久留米駅行 乗車時間41分 運賃620円)
田主丸中央バス停 | 甘観バスのバス停からちょっと歩いた所に、西鉄バスの田主丸中央バス停はあった。こじんまりとはしているが、割としっかりした造りをしている。 中の乗り場案内を見ると、白テープで隠された行先が多数あった。それを見ると、昔は長距離路線の宝庫だったようで、ここでの乗り換えもあったのだろう。実は先ほど乗った甘木−田主丸線も、元は西鉄の路線であるのだが、今はこの発着所は使用していない。 |
(1)のりば | − | (2)のりば | 急行久留米ゆき 快速久留米ゆき | − | (20)普通久留米ゆき (5)普通甘 木ゆき |
太字部分がテープで隠された部分。 杷木行きの左側の経由地は読み取れず。
「快速」という、西鉄としては珍しい種別が あったということが興味深い。 |
(3)のりば | 急行高塚ゆき 快速吉井・日田ゆき | | (4)のりば | 普通 吉井・浮羽・日田ゆき (----)杷木・(大石経由)杷木ゆき 草野経由JR久留米ゆき |
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急行高塚行き。日田バスはこの他にも急行朝倉街道−日田・高塚線という、これまた1日2往復の長距離路線を持っている。 | 待っている時に久留米方面から高速バスタイプの車輌がやってきた。このバスこそが、長距離路線の生き残り、一日2往復しかない日田バスの急行久留米−日田・高塚線である。外から車内をぱっと見た限り、乗客は一人しか居ないように見えた…この路線もゆくゆくは消えてしまうのだろうか…。
9時42分、田主丸中央発。乗ってみて、内装が普通のバスと違うことに気がついた。車内の前半が3列シートで、床材も柄入りのものである。もしやこれは、元「青バス」ではなかろうか。なんとなく乗り心地もマイルドな感じで、空気バネ仕様とも思える。
天気はすっかり、晴れ。 | 車内放送の言い回しが独特で「危のうございますので…」と言っている。確か最初に乗った甘木行きでは「危ないですので…」だったはずだ。同じ西鉄でも地区によって放送にも特色があるようだ。筑後川南の田園地帯を西へ。あんなにどんよりしていた雲は、いつのまにかすっかり消え去りっていた。 途中またもバスの廃車体を見かけるた。車体は西工のハンペンのようだが色は見たこともないようなカラーリング、どうやら塗り変えられているようだ。 バスはいつの間にか久留米の市街地に入っていた。敷地一杯に2、3階の建物を建て、道路に面する1階部分を凹ませて車が入るスペースにした、久留米風の建物が建ち並んでいる。…私が勝手に「久留米風」と呼んでいるのだが、実際、このような建物は他の街ではあまり見かけないのである。 西鉄のガードをくぐり、10時23分、西鉄久留米バスセンター着。 |
久留米まで乗ったバス。いろいろと調べてみたら、やはりこの車輌は元は「青バス」だったようだ。ちなみに「青バス」とは、市内急行運用に使われていた車輌で、そのカラーリングの面影は赤間急行の専用色に見ることができる。 |
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4.西鉄久留米バスセンター→佐賀駅バスセンター (西鉄バス [45]佐賀第二合同庁舎行 乗車時間70分 運賃900円)
久留米バスセンター | 久留米バスセンターは流石に広い。博多駅や天神のように狭い場所に無理矢理造った感じで無く、ゆったりとした造りで使いやすい構造になっている。ちなみにここ西鉄久留米駅までは福岡天神から特急で30分である。ここまでさんざん大回りして2時間47分…。大いなる時間の無駄遣いである…。
右の車輌が堀川バス。 |
10時40分、西鉄久留米バスセンター発。しばらくの間、前を私の好きなカラーのバスである堀川バスが走る。この色を見ると小学校の社会科見学で乗ったバスとともに堀川バスガイドの歌が思い出されていい…。途中JR久留米駅に寄り、JRのガードをくぐる。ちょうど下り「ゆふいんの森」が通過していた。 |
豆津橋の上にて。車内からガラス越しにとったのでこんなメルヘンチックな写真に。 | 豆津橋で本日2度目の筑後川を渡り、福岡県から佐賀県へ! 国道264号線を西南西へ。古くからある国道のようで、アスファルト舗装で無くコンクリート舗装の荒れた道をガタガタと走る。その上、水路の多い佐賀平野なので、橋を渡る度に大きく揺れ、まるで遊園地のアトラクションのようだ…。正直朝からずっとバスに乗ってる身としては辛い…。 佐賀市に入り、やっと道もしっかりしたものになり、11時50分、佐賀駅バスセンター着。まさかここに午前中に着けるとは思わなかった。 |
佐賀駅バスセンターにて降車時に撮影。ちなみにここは西鉄の一般路線の最西域である。ここまでやってきてやっと「西鉄の牙城」から逃れられた気がする…。 |
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■ 次 回 予 告 。 4時間と14分かけて、やっと佐賀まで来れた。新幹線なら名古屋まで行ける時間である。…だが、まだまだこの旅は続いて行くのである。…ってなわけで後編につづくのです。 |
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